2018.02.08 UP
2/8 今週のレコメンド【ギル・エヴァンス(後期)】
音の魔術師と呼ばれる偉大なアレンジャー『ギル・エヴァンス』について、前期・中期と時代ごとの特徴についてご紹介してきました。
前期はマイルス・デイビスと多くの作品を残した、クラシカルなギル&マイルス時代。
中期はクラシカルなサウンドにエレクトリックを取り入れ始めた時代。
そして今回は【後期】ギル・エヴァンスです。
後期のギル・エヴァンスは、”集団即興による音楽的実験”が最も大きなテーマと言えるでしょう。
リズム隊は表現の幅を広げるためによりエレクトリックに、管楽器隊はインプロビゼーション(即興)をサウンドに取り入れるようになります。それぞれのミュージシャンの個性を尊重し、その場で生まれるサウンドや音楽の流れを大事にし、その中で発生した「怒り」や「喜び」といった感情を爆発させる。そんな音楽を目指しました。
言葉だとわかりづらいので音源を。
Stone Free – Gil Evans Orchestra Live in Lugano 1983
往年のギル・エヴァンスはジミ・ヘンドリックスのナンバーを愛し、数多くのアレンジ曲を残しました。
この曲『Stone Free』もジミヘンの曲で、後期ギル・エヴァンスでは代表的なナンバーとなっています。メンバーにはThemaのペラいちの譜面だけが渡されあとは「自由」に演奏するという、曲名の如くFreeなナンバーとなっています。
よく聴くとギル・エヴァンスがFender Rhodesの鍵盤を叩き、ソロの終演やリズムチェンジなど楽曲進行の指示を出しているのが分かります。このギルの絶妙な指示出しや、メンバーの技術力の高さが相まって、フリーとはいえ高い音楽性を生み出しているのです。
この演奏だと個人的にはドラムのビリー・コブハムの多幸感溢れるドレムプレイに涙がこぼれます。
このStone Freeのテイクは割と聴きやすい方で、ギル・エヴァンス音楽の核心は、もっとスピリチュアルでさらにフリーな部分にあります。
例えば・・・1曲が25分ぐらいあるのですが、ニューヨークにあるライブハウス「Sweet Basil」でのテイクです。
こちらはさらに自由に各プレイヤーがのびのびと主張をし、音で喧嘩しているのが分かります。
お口に合えば幸いです。。
ちなみに、このギル・エヴァンスの曲を代々演奏し続けている学バン(学生ジャズバンド)があるのでご紹介しておきます。ちなみに私はここのOBです。
青山学院大学ロイヤルサウンズジャズオーケストラ
HP: http://agujazz.wixsite.com/royalsounds
ギル・エヴァンスの音楽はその音楽性からコンテスト受け(主に山野ビッグバンドジャズコンテスト)があまり良くないので、近年はそれほどギルナンバーを演奏していないようですが・・w
こんな変わった学生バンドもあるんだと頭の片隅に入れておいていただけると嬉しいです。
ギル・エヴァンスのお話3本立てでしたが、いかがでしたでしょうか。
ジャズを語る上では無視することができないギル・エヴァンス。
ほんのごく一部のみのご紹介となりましたが、これを皮切りに興味を持って頂けたら幸いです。
(文責:野口良)