• 2018.09.21 UP

    9/21 今週のレコメンド【Love, Loss, and Auto-Tune / Swamp Dogg】

    こんにちは。グランドファンクの茂木英興です。

    この作品、どこかで多少は話題になっているのだろうか?それとも特に気にすることもないちょっとした珍盤扱いなのだろうか?50歳目前の僕には情報の有無、熱量がもうよくわかりません・・・。わからないくらいがちょうど良い湯加減ですが。笑

    Swamp Dogg 『Love, Loss, and Auto-Tune』
    https://itunes.apple.com/jp/album/love-loss-and-auto-tune/1391970463


    スワンプ・ドッグという76歳のノーザン・ソウルのアーティストによる9曲入りのアルバムです。僕はジャケ、タイトル、コンセプト、音楽的内容、MV、全てに打ちのめされました。こんな作品は久しぶりです。

    タイトル『愛、喪失、そしてオート・チューン』のオート・チューンとは、デジタルレコーディング、プロトゥールスによるレコーディング以降に登場した音を加工するエフェクターのことです。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%B3

    発売当初は下手な歌や演奏を直す、どちらかというと悪名高いエフェクターだったのですが、もはやそういう視点だけでは語れない、世界のポップスを変えたプラグインになりました。ヴォーカルを演奏するという、ディストーションやディレイに匹敵するアートフォームを持つエフェクターだと思います。これはその昔、サンプラーという楽器が本来楽器の生音をシミュレーションするために作られたのに、HIPHOP界隈でターンテーブルからフレーズごとサンプリングして使い出されたことによって世界中に広まっていったことに近いかもしれません。

    スワンプ・ドッグがオート・チューンによる独特な効果に注目したきっかけは、Kanye Westの「808&Heartbreak」なのだそうです。オート・チューンはある種の感情を拡大すると言ってます。そして「世界の新しい音楽は、オートチューンでいっぱいだ」と思ったそうです。その通りですよね。笑。それからスワンプ・ドッグはプロデューサー、ライアン・オルソン(Ryan Olson)に本アルバムの構想を伝え、ライアン・オルソンがいじくり倒し、このアルバムが生まれたようです。

    (時代とずれてしまった、それでも現役の)老御大の音楽を若く先鋭的なクリエイター、プロデューサーが新しい目線で料理し、新鮮と王道を共存させる、というようなよくあるトライ(悪いこととは思いませんが)とは一線を画した独特な重みを僕はこの作品から感じました。

    ビデオも凄いです。チェーン、目、腹、・・・、素晴らしい。



    このアルバムで一本映画音楽作れるなー。

    茂木英興(音楽プロデューサー)