2018.10.29 UP
10/29 今週のレコメンド [映画:黙ってピアノを弾いてくれ]
“黙ってピアノを弾いてくれ”というドキュメンタリー映画を観ました。
これがとても刺激的な作品だったので、今週はこの映画をご紹介します。
ドキュメンタリーの主役はチリー・ゴンザレスというアーティストで、彼の半生を追う内容です。
(まだまだ存命です。誤解のないよう。)
簡単な生い立ちは以下の通り、
チリーゴンザレス。本名はジェーソン・チャールズ・ベック。
カナダ出身のトラックメイカー/ラッパーでありピアニスト。
(もうちょっと詳しく書くと、wikipediaの肩書き欄には、Composer, pianist, entertainer, Singer, rapper, producer, songwriter, actor, screenwriterと記載されています。)
幼少期にはピアノを弾き、学生時代にはロックバンドを結成。
Peached、Feist、Mockyら名だたるカナダのアーティストと共に研鑽を積むと、1999年にベルリンへ渡独。
電子音に即興ラップをのせ、体を揺らしまくる。その前衛的なパフォーマンスで話題を呼び、やがてエレクトロ/Hiphopのアーティストとして名声を得ていきます。その後、2004年に原点回帰と称したピアノソロ・アルバム”Solo Piano”を突如リリース。
それまでのエレクトロニックな音楽とはまったく方向の違うプライベートな小曲を集めたこのアルバムは世界中で賞賛を受け、唯一無二の天才と言われる現在に至ります。
このドキュメンタリーは観る人によって、娯楽とも、伝記とも、見習うべきバイブルとも取れると思うのだけれど、
個人的には、根底には”アーティストがアーティストとして生き続けることがどれだけ難しいか。”というテーマがあると思っています。
劇中、本人がベルリン時代の前衛パフォーマンスの映像を回顧して、今考えただけでも”うわー、、、”って思うと言っています。笑
ゴンザレスも彼の音楽も狂気に満ちた天才のものだけれど、
それはジェーソン・チャールズ・ベックではなく、あくまでチリー・ゴンザレスであって、
ならばきっと、ジェーソン・チャールズ・ベックは何人もの狂人やアーティストを演じ分ける天才なのでしょう。
だとすると、彼がピアノソロに立ち返ったことはゴンザレスとジェーソン・チャールズ・ベックを一人の人間として統合するための作品なんだな。と
重たいトーンは一切無い、ぶっ飛んだパフォーマンスが爽快な映画ですが、こうして考えるとピエロのような泣き笑いの作品にも見えてくるのです。
これから全国のミニシアターで公開されていくようなので、機会があったら是非ご覧になってください。
宮地